創作模写とは、模写をする側がアレンジを加えるものです。
現物は紙にデッサンですが、鉛筆の無い時代でインクの種類もわからない、ビスタという素材も手に入らない、これは創作模写にしかならないのです。
私は、自然の肌合いを持つシナベニヤに、油絵具で「デッサン」を行ってみました。

1.荒描き(ラフ)

レオナルド-ダ-ヴィンチ、「受胎告知」のための習作シナベニヤに荒描き、土系顔料で行います。 全体的に形を探る段階で、ラフな描き出しです。
土系顔料は安定性に優れ、下塗りには伝統的に使われています。

2.白色浮出・暗部書き出し(ラフ)

[レオナルド-ダ-ヴィンチ、「受胎告知」のための習作」白色浮出1回目と、暗部書き出しを行います。白色浮出=ホワイトモデリング、つまり明るいところを描き立体感を出す作業です。
暗部書き出しも、もちろん立体感を出すためです。細やかな対象に迫るため、一転して描き込みを行いました。

 

3.着色

[レオナルド-ダ-ヴィンチ、「受胎告知」のための習作」全体に着色、イエローオーカーを使い、描き込みを馴染ませ、奥行きを出します。
現物には、紙の染み滲み汚れなど、歴史の痕跡があるため、筆跡を残しました。

4.背景の調整

[レオナルド-ダ-ヴィンチ、「受胎告知」のための習作」シナベニヤの質感を出すために、背景を削り落としました。ここは私の創作です。
木の素材感を引き出したい、日本的感覚かもしれません。

5.明るい部分を描く

[レオナルド-ダ-ヴィンチ、「受胎告知」のための習作」さらに白色浮出2回目を行います。明るい部分すべて狙っていかざるを得ませんでした。
余りに髪の毛のウェーブが繊細で、追いきれなかったためです。

6.仕上げ

[レオナルド-ダ-ヴィンチ、「受胎告知」のための習作」透層=赤い透明色をうす塗りします。乙女の明るさ、華やかさを表現したかったためです。
今度は最も明るい部分(ハイライト)のみを狙って、白色浮出3回目行っています。
指の第二関節から先が固まる思いで、髪の毛のウェーブを追いました。一応の完成。

終わりに

模写に取り組んだのは、本当に久しぶりでした。
絵画技法材料で佐藤一郎教授に習った、思い出が甦りました。
現代アートを専門にしていても、私にはこういうものを描くのは抵抗がありません。
元来、レオナルド-ダ-ヴィンチが好きで、「ものすごい」完成度に触れるのはいい機会です。

圧倒的な技量の差でした。模写をして、どうだすごいだろ!というヤツは、アホですね。
髪の毛は、繊細で優美、しかもカーブが全部違う! 手がプルプルさせて食い下がりながら、こんな超人が本当にいたのか?と。

ダヴィンチは、ほんの1.5mmマリアの口元を書き換えています。口角が少しばかり上って、表情が和らいでいます。
これが判った時は、少し興奮しました。うら若き乙女が、崇高で重い運命を受け止める時「微笑」を湛えることが出来るのか?と。

言葉では伝えにくいことでも、「デッサン」は雄弁です。ダヴィンチのイメージ、筆遣いは優しさに溢れていていました。



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