水の入ったグラスのデッサン

今回は、水の入ったカットグラスを描きます。2バージョンあります。
白画用紙に描いたバージョン、素材は鉛筆8H~B。
黒画用紙に描いたバージョン、素材は色鉛筆の、白、ベージュ、明るいグレイの3本と、白水彩絵具。

1、白画用紙バージョン

これは「光の乱反射」そのものですね。キラキラです。人が、光もの、透明なものに惹かれるのはなぜでしょう?そういえば正倉院宝物の「瑠璃椀」、同じような丸型のカットがされているのを思い出しました。それにしても、本物のカットグラスの反射率は、量産品のグラスとまったく違う複雑さ。ぐにゅぐにゅと屈折した模様に、妙に呪術的なものを感じてしまい、古代人もそんな感動を持っていたのかもしれないと想像すると楽しくなります。

前回「写真そっくりにすること」は、「描く意味が余り無い。」ことを申し上げました。だから立体感だ、質感だと、難しく感得しすぎないで、乱反射模様をうまくつまんで、あっさり仕上げることにしました。

 

2、黒画用紙バージョン

あっさりし過ぎているかと思いましてサービスのつもりでやったら、白画用紙の3倍の作業量、大赤字です。当たり前になり過ぎていることを逆転すると、新鮮かつ大変かつ大発見です。通常は、白の紙に黒の鉛筆。「暗い部分」から描いていきます。今回は、白鉛筆で「明るい部分」から描いていく。言葉だと簡単ですが、初めて体験した時は、どこを描いていいか混乱します。「脳」を感じる面白い機会、是非体験してみてください。

もう一つ、色価(バルール)についても説明がしやすい。「紙の色」と「描かれたモチーフの一部」が一体化しているかどうかが、「色価が合う」基準になります。「白の紙」に「黒の鉛筆」で描くと、「ハイライト」と「紙の白」が「色価が合う」。「黒の紙」に「グラス」を描くと、「グラスの一番暗い部分」が「黒の紙」と「色価が合う」?いいえ、グラスにはそれほど暗い部分はありません。もっと薄い色の紙の方が、このモチーフとは色価が合うのです。

そのため、背景を塗り重ねたり、作業量がとても多くなってしまいました。作業効率から考えると良い方法とは言えないかもしれませんが、効率の良し悪しと作品の良し悪しは関係ないところも、アートの面白いところ。黒の紙はコントラストが強いため、光の表情が強調されます。背景の白を縦に横に丁寧に重ねることで、鉛筆のタッチがマチエールとしていい効果になったと思います。

 

 

効率の良し悪しの下りですが、浜口陽三氏のカラーメゾチント、ひつこいほど版を重ねることで滲みだしてくる味わいは、東洋の感性として世界に高く評価されたことを、思い出します。これは効率からいえば、わざわざ遠回りの手法。しかし「隠す」「崩す」「枯淡」「熟成」などの「極渋」の手法が、過去当たり前にあったという事実でも有ります。「克己」「修身」とかも、道徳的だとか右翼的だとか思わないですね、多分そのような精神性があったから「極渋」の作業が出来た。私は、これがリアル・クール・ジャパンだと思う。戦争の記憶もそうですが、無くなって欲しくありません!ね?

 



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